最近の1冊 1999年  






全然更新しないまま、新しい年を迎えてしまうことになりました。せめて読んだ本の中から記憶に残った作品を書き留めておきたいと思います。すぐには無理ですが、さかのぼって徐々に書き足していきたいと思っています。(2000年1月1日)
【1999年5月】

 ★☆ 1999年5月の読書から ☆★

★ 梨木香歩『からくりからくさ』新潮社
 ”からくり からくさ”という響きは、機織りの音にも似て、ストーリーのからくり、からくり人形、唐草模様など、いろんな意味を連想させるタイトルだと思います。ひとつの言葉に、いくつもの意味を含める梨木香歩さんならではの”しかけ”は他にもあって、謎解きの楽しさもありました。いつまでも物語世界の中に身を置いておきたくて、続けて2回読みました。
★ 寮美千子『ラジオスターレストラン』パロル舎
 『小惑星美術館』と同じく、ユーリという少年の登場する物語。
謎の牙虎に追われてたどり着いた、不思議なラジオスターレストラン。気のいいロボット、ラグが振る舞ってくれるフルコースは、壮大な宇宙の味わい。地球、星、宇宙が織りなす果てしなく広く遠い世界、恐竜と化石と鉱物という大好きなものがふんだんにちりばめられ、世界がキラキラと輝いて感じられる1冊です。
★ 斉藤洋『ドローセルマイアーの人形劇場』あかね書房
不思議な人形使い師ドローセルマイアー老人の人形劇に惹かれて弟子になった主人公。運命的な出会いと、それを自分の人生として選び取ったこの物語は、とても好きな作品です。
★ 斉藤洋『消える人たち −九つの不思議な話−』小峰書店
 舞台は現代の東京。内容的には大人向けの怪談話といってもいい雰囲気。
★ ロベルト・ピウミーニ『マッティアのふしぎな冒険』文研出版
★ 恩田陸『不安な童話』祥伝社
★ 安房直子『鶴の家』講談社文庫
★ 和田登『魔界の使者コウモリ男 怪奇ミステリー』
【1999年4月】

久しぶりに大阪府立国際児童文学館に行ってきました。「児童文学館見学と新刊書の研究会」という催しに参加したのですが、1階貸出室で天沢退二郎さんの『闇の中のオレンジ』を発見!『魔の沼』のあとがきで、オレンジ党の起源について書かれてある本だと知って、読みたいと思っていた本です。貸出室の本は誰でも借りることが出来るというので思わず借りてしまいました。神宮輝夫さんと梨木香歩さんの対談が雑誌「季刊ぱろる7 翻訳って何・」に載っているのを見つけたのでこれも借りたのですが、この記事も見逃せない内容です。いろんな翻訳児童文学を通して、言葉の持つ力や物語観について語られていました。

☆ 梨木香歩さんの講演会で配られたリストから、梨木香歩さんの作品が「飛ぶ教室」のNo.48からFINAL号に収載されていることを知りました。
☆ 岡田淳さん自作の年譜(『現代児童文学作家対談 8』(偕成社)からは、岡田淳さんが「日本児童文学」にいろいろ書いておられたことを発見しました。
「日本児童文学」「飛ぶ教室」「季刊ぱろる」といった児童文学関係の雑誌は、単行本になっていない短編や、エッセイ、インタビュー記事の宝庫です。

2週間後、児童文学館へ本の返却に行った時、雑誌のバックナンバーをチェックして、お気に入りの作家の、単行本として出版されていない作品が収載されている号を調べてきました。『絵本とおはなし』という雑誌に岡田淳さんの知らなかった短編を、『音楽広場』ではインタビュー記事を発見できたのは大収穫でした。
 ★☆ 1999年4月の読書から ☆★

★ 寮美千子『ノスタルギガンテス』パロル舎
★ 天沢退二郎『闇の中のオレンジ』筑摩書房
★ 天沢退二郎『オレンジ党海へ』筑摩書房
★ 特集アスペクト『子供の本がおもしろい!大人のための児童小説ガイドブック』アスペクト
 ★☆ 1999年3月の読書から ☆★

★ 伊藤遊『鬼の橋』福音館書店
★ 森絵都『カラフル』福音館書店
★ 森絵都『つきのふね』講談社
★ 景山民夫『ティンカーベル・メモリー』角川書店
★ E・L・カニグズバーグ『ジョコンダ夫人の肖像』岩波書店
★ ロベルト・ピウミーニ『光草 −ストラリスコ−』小峰書房
★ マーガレット・マーヒー『紙人形のぼうけん』岩波書店
 ★☆ 1999年2月の読書から ☆★

★ 竹下文子『スターズ』<魔女に狙われた大都会>パロル舎
今、私が注目している作家の一人です。最初に『シナモン・トリー』パロル舎を読んで、なんだかイメージと違うと思いました。もっとふわっとした夢の世界を描く人だと思いこんでいたのですが、この本では現代の問題を含んだシャープな感じのファンタジー世界が描かれていました。
『シナモン・トリー』は、愛犬トリーを追って少年が迷い込んだ、ゴミが支配する奇妙な世界。
『スターズ』では、特別な力を持って生まれた少年が、仲間と一緒に魔女と闘う現代の物語です。
図書館で『土曜日のシモン』偕成社も借りて読みました。1979年に出版されたこの本も夢があってよかったのですが、やはり何か違っています。
『シナモン・トリー』『スターズ』は、パロル舎の「貘の図書館」というシリーズに収められており、このシリーズの中に、寮美千子さんの『小惑星美術館』があります。『小惑星美術館』を書棚で見つけた時、何か”特別な”感じがして、とても惹きつけられるものを感じましたが、小林敏也さんのイラストという共通点もあるお二人の作品には、同じ世界観、パワーのようなものを感じます。 児童書にはめずらしい黒いイラストが魅力的な小林敏也さんですが、他に芝田勝茂さんの『夜の子どもたち』『君に会いたい』『ふるさとは、夏』、これから読もうと思っている寮美千子さんの『ラジオスターレストラン』などがあります。

★ J.R.R.トールキン『サンタ・クロースからの手紙』<クリスマスレターつき>評論社
かなり前に図書館で見た大判絵本だと思って注文したら、届いたのは新装版で、三分の一くらいの大きさのしかけ絵本でした。シックな色彩とダイナミックな構図が見事で、見つけたら買おうと思っていた本が、インターネットの書籍のサイトで簡単に見つかったので楽しみしていただけにかなりショックでした。子供へのプレゼントにはこちらの方がいいのかもしれませんが、やけに白っぽく、なんだか整備されて公園になってしまった野原のようで、あまり魅力が無くなってしまいました。内容は、トールキンが、毎年サンタクロースになりすまし、自分の子供たち宛に書いていた手紙をまとめたものです。 ふるえるような飾り文字で、北極熊や、ゴブリン、エルフといったサンタの国の住人とのエピソードの数々が毎年工夫を凝らして書かれています。こんな素敵な手紙を毎年受け取ってサンタクロースの存在を信じていた子供たちが、本当にうらやましくなってしまいます。新装版では手紙やカードが一通ずつ封筒に入っていて、本当の手紙のような形式になっていました。

★ 『現代児童文学作家対談8』<岡田淳 斉藤洋 皿海達哉 インタビューア:神宮輝夫>偕成社
話上手な岡田さんのインタビューはもちろん、ご自分で書かれた年譜もユーモアたっぷりです。
6歳「甲子園ホテルの裏の水路で、10センチほどの人魚の赤ちゃんを見たと思いこんでいたことは、だれにも言っていない。」 32歳 小学校時代の前半を過ごした西宮市立上甲子園小学校に、23年ぶりに図工教師としてまいもどる。「昔の甲子園ホテルの裏にある池は、校区の子どもたちにとっては、ザリガニとりの名所であった。人魚の赤ちゃんがザリガニであったとは思いたくないが、大きさと色が一致するのである。」>
『日本児童文学』などの雑誌に書かれた作品について年代ごとに記録されていたのも、すごく貴重な情報でした。

 ★☆ 1999年1月の読書から ☆★

★ 恩田陸『六番目の小夜子』新潮社
 1991年の日本ファンタジー大賞の最終候補になり、加筆改稿後、新潮文庫ファンタジーノベル・シリーズの1冊として刊行された作品です。長らく絶版だった文庫本が、単行本として発売されたと、あちこちで話題になっていたのを見て読んでみました。
 ある高校に伝わる奇妙なゲームをめぐる、ちょっとホラーめいたミステリー。雑誌「鳩よ!1999.3」(特集:恩田陸 ジャンルを超えて)のインタビュー記事に、この作品がNHK少年ドラマシリーズへのオマージュだと書かれていました。なるほど。。。『三月は深き紅の淵を』は、ロアルド・ダール『チョコレート工場の秘密』などへのオマージュだとか。続けて何冊か読んだのですが、一番好きな作品は『光の帝国 常野物語』です。不思議な力を持つ一族を描いた短編集ですが、同じ世界の出来事なので、頭を切り替えることなく読み進められます。本や楽譜を”しまう”ことが出来るなんて魅力的。続きが読みたい1冊です。
 会社を辞めて本格的な作家活動を開始されたという恩田陸さんの作品がこれからも楽しみです。

★ R.M.ファーリー『液体インベーダー』(海外SFミステリー傑作選)国土社
 子ども向けに出版されたSF・ミステリーシリーズの1冊です。高い知能を持つ黒い液体と科学者の友情を描いた不思議な物語で、自分でも単純だなと思いながら、最後すごく感動して泣いてしまいました。

★ 北村薫『朝霧』 東京創元社
「円紫さんと私シリーズ」の5作目です。季刊雑誌「活字倶楽部 '99春号」雑草社の”作家登場”コーナーに北村薫さんが載っているのを見つけました。覆面作家としてデビューされた当時は高校の国語の先生だったというエピソードから、『スキップ』(今年の7月1日文庫化予定)の謎が少し解けたような気になったりして、インタビュー記事というのは、作家の素顔、作品の裏話がわかって興味深いです。ただ、もうすぐ出るかと期待していた<時と人>三部作の最後の『リセット』は、まだ一字も書いてないとのことで、ちょっとがっかりです。

★ J.R.トールキン『指輪物語』評論社
『ホビットの冒険』は大好きだったのに、『指輪物語』の世界はあまり楽しむことができず、一度挫折した経験があるのですが、インターネットを通じて熱烈なファンの多さに驚いたこと、ファンの中にも挫折した経験のある人が結構多いことを知って読み始めました。現在出版されているのは新訳で、旧訳とは雰囲気も違うようです。迷っていたところ、BOOK OFFで旧訳の文庫本を見つけたので、こちらで再挑戦することにしました。何しろ長い物語です。他にも読みたい本がどっさりあるので、『指輪物語』は主に通勤時に読む本と決め、バッグに入れて毎日少しずつ読むことにしました。
 最初に図書館で借りて読んだ時は、本の大きさにも圧倒されたのかもしれません。早く読んで返さないといけないというプレッシャーから、物語を味わうよりも文字を追っていただけなのかもしれません。今回はちょっと手応えが違います。毎日切れ切れにしか読まないのに、本を読み始めた途端、すっと自然に物語の世界に入っていけて、魔法の指輪をめぐる黒の乗り手たちとホビットたちの闘いと旅を楽しんでいます。毎日少しずつしか進まないのですが、それがまた同じ時間の流れを進んでいるような感じです。


【1999年2月】

  更新が遅れてしまいました。紹介したい本はいろいろあったのですが、何と言っても2月の一番の出会いは、
  梨木香歩さんの『丹生津比売』です。


 『丹生都比売(におつひめ)』 
梨木香歩
原生林
1995年11月
1,200円

 とても清らかで、美しい物語でした。梨木香歩さんの作品を読むのは3作目でしたが、『西の魔女が死んだ』(小学館)や『裏庭』(理論社)がイギリスの香りの漂うファンタジーなのに対して、これは純日本風のおとぎの世界だと感じました。

 この本を手にした時、渋いグリーンのシンプルだけれど厳かな感じのする装丁が、古代の日本へ誘ってくれる雰囲気がありました。巻末にある系図と同じものが、和紙のような白い地模様のトレーシングペーパーに印刷されて挟まっています。歴史に弱い私にはこれが頼りで、何度もこの系図を見ながらだったのですが、読み終えた時、なんともいえない感動がこみ上げてきました。

 実は最初読み始めた時、なかなかこの本の世界に入って行けず、しばらくそのまま置いていました。ところが、次に続きを読みかけた時、これはちょっと居住まいを正して読まなくては!と思わせるものを感じて、最初から一気に読み直しました。

 不思議な少女キサや、無邪気な忍壁皇子とのふれ合いで、つかのま慰められる繊細な皇子の心は、夜な夜な恐ろしい夢にうなされ、強い野心を持つ母(持統天皇)の恐ろしい罪をも、敏感に感じとります。びいぃいん びいぃいん びいぃいん という弓弦の音と、大きな蓑笠を被った鬼の姿。人の心の闇の深さを象徴する鬼と、自覚してそれと向き合う母の姿が、人間の心の弱さ哀しさを際だたせています。様々な人間が描かれる中、私が寄り添い、辿るのは皇子の心でした。

 明るくて強い大津皇子を悲劇の主人公にした小説は多いですが、草壁皇子は持統天皇の陰に隠れて、ひ弱なマイナスのイメージで描かれることが多かった気がします。それが、この作品では、草壁皇子の強くはないけれども、豊かな内面を持ったやさしい心が描かれていました。草壁皇子をこんなに素敵に描いてくれたことがうれしくて、そして皇子をやさしく見守り、導いてくれた丹生都比売の姿に救いを感じ、覆すことの出来ない哀しい事件にも、あまり傷つかず感謝しながら読むことが出来ました。


 2月28日、滋賀県甲西町立図書館で行われた 梨木香歩さんの講演会に行ってきました。

 講演の中で、梨木さんは、犠牲の美学というものについて語られました。
 アポトーシスという言葉があるそうです。人間の手がお母さんのお腹の中で形作られる時、最初から指として分かれているのではなく、ある時、指ができる時に死んでいく細胞があります。どうしてだか分からないけれど、ある細胞が勝手に死んでいき、指を形作るのだそうです。『裏庭』で川の氾濫を沈めるための犠牲、人身御供となったハシヒメや、草壁皇子も、そういう流れのようなものに身をまかせたのだと。こんなに野心を持ったお母さんがいる。そのお母さんのために死んであげてもいいやと、素直に思い定める草壁皇子、そういう子供を描いたのだと語られました。


 【参考図書】  吉野祐子『持統天皇』人文書院
         椎屋紀芳『ロマン紀行−壬申の乱』毎日新聞社

 【こんな本も】 長岡良子『眉月の誓 1−4』秋田書店 ボニータコミックス


  ★ 梨木香歩さんのその他の著作 ★






★★★ ホームページを開設して1年が過ぎました。★★★

 今までに読んだ本の中から、気に入った本をとりあえずリストアップすることから始めたHPですが、紹介文がなかなか書けず、書名だけだったり中途半端なままにしている本がいっぱいです。
 昨年は、この“最近の1冊”のページで、とりあえず月1冊を目標に、その月に読んだ本の中から、"ひと味違って光っていた本"という基準で紹介してきましたが、今年は冊数にとらわれず、その時に気に入った本、印象に残った本について書きたいと思っています。


【1999年1月】
 今年は、新年早々いい本にたくさん出会えました。
素敵な本にいろいろ出会えそうな予感がする好スタートです。


『早起きのブレックファースト』
堀井和子
KKベストセラーズ
1998年4月
1,200円
 
 堀井和子さんのライフスタイルは私のあこがれです。
パンやお菓子作り、お料理の本をはじめ、エッセイ/紀行など、数多くの本を出されていますが、この本は新年最初に読もうと楽しみにとっておきました。
 澄んだ朝の空気と焼きたてのパンの香りが漂うようエッセイと透明感のある写真は期待通りで、とても幸せな気持ちになれました。

 お料理の本が原書で読みたかったから専攻されたというフランス語、ご主人の仕事の関係で暮らしたアメリカ、そして日本...それがヨーロッパのものであっても、アメリカでも、日本でも、シンプルで本当にいいものを自分の生活に取り入れておられるセンスは抜群で、毎日の暮らしが楽しくなるヒントがいっぱいです。
  
 年末に読んだ最新刊『のんびり日曜日のチーズの本』(マガジンハウス)もおすすめで、食べたことのない、いろんなチーズを試してみたくなりました。

道ばたに咲いている草花や枝ものをセンスよく生けられる横山美恵子さんも素敵な人です。堀井和子さんと横山美恵子さんの共著『ベランダの庭仕事』(CBSソニー出版)では、レンゲ草や小判草、クローバー、スミレなど、野原の草花が主役でした。
 花だけでなく、種や茎、球根、根っこの先まで全部含めた美しさを紹介した写真と文章から、植物を観察しながら育てる楽しみを知りました。
 インゲンがこんなに可愛かったなんて、この本で初めて気づきました。

 『ティーカップの中のブーケ』(文化出版局)は、堀井さんのお菓子と横山さんの植物の組み合わせが美しい本です。普段使っているお皿やカップに生けるだけで、こんなに素敵になるのかと感心するヒントがいっぱいです。

 『ウィークエンドのバラ』(文化出版局)が出版された時、輸入雑貨のお店「キャトル・セゾン」神戸店でお二人のおしゃべりを聞く機会があったのですが、遊び心あふれる本作りのエピソードが聞けてとても楽しいひとときでした。

 堀井さんが "ベーグルの会"という名前でお友達と作られていた食器もシンプルだけどおしゃれで大好きでした。「キャトル・セゾン」のお店に並べられていて、行くたびに眺めるだけでもうれしくて、いつも楽しみにしていたのですが、それぞれ本業が忙しくなって解散されてしまい、とても残念でした。
 またいろんな食器をデザインしていただきたいと思います。

★ 自由が丘にある、TC自由が丘という雑貨ショップに堀井和子さんのコーナーができていました!インターネットで知り合ったお友達からの情報で、2月末にちょうど東京へ行く機会があったので案内していただきました。
 ガラスのお皿、グラス、ポストカード、ポットカバー etc. 堀井さんご自身のデザインばかりでなく、甥ごさん、姪ごさんが描かれた絵をデザインした商品も並んでいて、ちょっとうらやましく思いました。堀井さんの手書きイラストのラッピングペーパー(10枚入り)を買いました。




『ちいさな原子論者たち』
伊藤恵
仮説社
1998年8月
1,600円

 「仮説実験授業」というのをご存知でしょうか?
 本書はしがきによれば、1963年、板倉聖宣さんによって提唱された授業理論で、「科学上のもっとも基礎的・基本的な原理・法則・概念を、感動的に教えることを(特別に熱心な教師でなくてもできるように)意図した授業」だそうです。この授業書自体は、それほど一般の人が読んで楽しいものではありません。

でも、この本に感銘を受け、どうしても仮説実験授業がやりたくて小学校の先生になった女の子がいます。めぐちゃんです。ピンクハウスのふりふりのお洋服で教壇に立ち、生徒から"先生"ではなく、"めぐちゃん"と読んでもらう愉快な先生のことは、前作『めぐちゃんは、授業する女の子』仮説社で知りました。

 仮説実験授業は一方通行の講義ではありません。ある科学実験の前に予想をたて、なぜそう思うのかを生徒ひとりひとりが自分の考えを発表し、討論し合う形式の授業です。予想と違う結果に驚き、その不思議が興味につながり、楽しみながら学んでいく過程が詳しく紹介されています。
 この本は、めぐちゃんが実際に小学校1年生のクラスで行った原子論の授業の様子を、落書きのようなイラストといっしょに紹介した授業記録です。
 使用した授業書は <もしも原子が見えたなら> <結晶> <三体変化>

 ”原子は、みんなつぶつぶで出来ている”ということを学んだ子ども達が、予想を超えるレベルで原子の動きを理解し、体中でそれを表現するところは感動的です。たとえ小学校1年生でも楽しければ、立派な原子論者になり得るんですね。
 科学ってとても面白いんだ。その楽しさを子ども達以上に味わい、子どもってすごい!と感動する素敵な先生と、活き活きした子ども達の姿がほほえましい驚きの1冊でした。


【 めぐちゃんオススメの入門書 】
  板倉聖宣『仮説実験授業の考え方』(仮説社)
  板倉聖宣『未来の科学教育』(国土社)


 『めぐちゃんは、授業する女の子』仮説社
 この本は図書館で教育の棚に並んでいながら、かわいい雑貨屋さんの紹介ページがあちこちにあって、初版発行の1986年当時としては、りっぱな雑貨屋さんのガイドブックだったともいえます。
 楽しい授業を考え出すことに関しては、抜群のひらめきを見せるめぐちゃんのアイデアがいっぱいつまった、おもちゃ箱のような可愛い本です。けしごむスタンプの作り方なんていうのも載っています。

 『ものづくりハンドブック3』(仮説社)
 「愛と感動の結晶物語」という題で、めぐちゃんの授業記録が載っています。
 他にも楽しい科学遊び、実験のいろいろが紹介されています。


 『小さな原子論者たち』を読んで、頭が原子論モードになっていた私は、こんな本を発見し買ってしまいました。

 飯野睦毅『まんが アトム博士の原子物理学探検』(東陽出版)
 吉田正 著/野本昭二 監修『まんが アトム博士の量子力学探検』(東陽出版)


 科学の基礎理論をマンガでわかりやすく説明したこのシリーズは、他に「相対性理論」「電磁気学入門」「宇宙探検」「数学探検」など10冊ほど出版されているようで、手塚治虫さん、石ノ森章太郎さんがまんがの監修をされています。
京都の大型書店の科学書の棚に、他の難解な専門書といっしょに並べられていました。

 



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