Time Traveler 1

  享和3年……と申しますから1803年、今から167年前の3月24日。

 今でいう茨城県、常陸の国は、原舎浜(はらとのはま)に、なんとも奇妙な船が流れつきました。

 丁度大きなお釜のようで、中には女がひとり乗っていました。

  年齢20歳位、ふしぎな織物の着物を着て、顔の色は雪よりも白く、黒髪あざやかに長く後にたれ、

 その美しさは、たとえようもなかった……と、いうようなことが、天保年間に江戸で出版された

 ”梅の塵”という本に記録されています。

  この女は何者だったのか、そして空飛ぶ円盤のようなこの船はどこからきたのだろうか。

 もしかしたら……この船は実はタイム・マシンで、女は未来から来たのかも知れません。

  実際世の中には、人間の知識では計り知ることの出来ないふしぎなことが、時たま起こるものです。

  享和3年3月24日、常陸の国原舎浜に未来人が現れたように、

 今……たった今にも、時間の流れを飛び越えることができる人間、タイム・トラベラーが、

 すぐそこに来ているかもしれないのです。あなたの、身近なところに……。


−「タイム・トラベラー」脚本 石山透 [大和書房]より−






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