寮 美千子(りょう みちこ)

   
 初めて寮美千子さんの本に出会ったのは、京都にある大型書店の児童書コーナーでした。
 書棚に並べられた色とりどりの本の中に『小惑星美術館』というシンプルな装丁
の本を見つけた時、何か磁力のようなものを感じ、この本には何かがあると、秘密の宝を探り当てたような気がしました。

 寮美千子さんは詩人です。詩人というのは、肩書き/職業という意味でなく、心の内側を言葉で表現せずにはいられない、あふれ出る言葉を紡いで文字で世界を形作る力を持った人のことだと思います。
 それだけに寮さんの作品は、わかる人とわからない人にきっちり分かれるのだそうです。感性の周波数なのか、それはもう理屈ではなくて "わかってしまう" らしい。私にとっては『小惑星美術館』『ラジオスター・レストラン』が特別大好きな作品です。

 以前、セントギガで音楽と共に流されていた詩/言葉。月の満ち欠け、潮の満ち引き、日の出日の入りのリズムに従って構成されていた放送局で、ヴォイスと呼ばれていた作品を担当されていたお一人でもあったそうです。
 寮美千子さんの掲示板 "Cafe Lunatique" では、再びきらめく言葉に出会うことができ、毎日その言葉を聴きにくる人達でにぎわっています。

1

 小惑星美術館

  (パロル舎)


 遠足に出かける朝、時間を間違えて大急ぎで集合場所にかけつけたユーリは、オートバイに跳ねられ、銀河盤にぶつかってしまう。気がついた時、周りにいたのは、よく見知った顔なのにどこか違う友達や先生のいる不思議な世界。訳のわからないまま、宇宙船に乗り込み、一生に一度、12歳の子どもが必ず行かねばならないという遠足に出発する。
 理想の世界とは、人類とは?「掟」に従い、宇宙に漂う「レンガの月」へと出発した子ども達の謎を解く旅。
2

 ラジオスター・レストラン

  (パロル舎)

 骨格が透けて見える恐竜が、雪の降る平原で立ち止まっている表紙。タイトルのバックには土星の浮かんだシャンパングラス、裏は巨大な天文台。ページを開くと、『星祭りの歌』の楽譜が印刷されている。
 帯には、天文台、牙虎、水晶、恐竜、流星、少年...。宇宙科学とファンタジーの美しい結晶。なつかしくて新しい永遠の物語とあり、読む前からわくわくしてくるような本でした。

 ヴァイオリンのレッスンの帰り、ユーリは汽車の中で、夜のようにまっ黒で大きな牙虎を見る。謎めいた天文学者、モリモ博士の講義中、同じく牙虎を見たイオは、星祭りの夜、この日は入ることを禁じられているギガント山に行くことを提案し、ふたりは再び山の中で絶滅したはずの牙虎に出会う。牙虎を追いかけるうちに、ひとり、まっ暗な空間に投げ出されたユーリは、半球のドームいっぱいに星が光る場所で、ブリキの玩具のような旧式ロボットのラグに出迎えられる...「ガガピー、ガピー。ラ、ラジオスター・レストランへようこそ」。

 土星のカクテル、星の卵のキャビア、銀河の火魚など、ラグによって運ばれる不思議な料理は、宇宙のかけらを味わうようで、冷たくて硬そうだけど、なんて魅力的!
 時間の波の打ち寄せる浜辺、時間の滴が落ちて結晶化する恐竜の骨、夢をみる化石、etc. 好きなものが、たくさんたくさんちりばめられ、壮大な宇宙の広がりと生命の秘密を感じることができる本、生きていることのふしぎ、素晴らしさを感じることができる本です。
3

 ノスタルギガンテス

  (パロル舎)

 ぼくの大切な怪獣のプラモデル。ママが捨ててしまったゴミの中から救い出し、森の中に密かにつるす。誰にも知られないようにこっそりと隠したはずなのに、次第にそれ自身が君臨し、巨大な増殖するキップル(ゴミ)の山を形成していく。
 自分の確かな世界を持った少年の魂の叫び。
 "ノスタルギガンテス" その響きからして、ひどく心を揺らす、散文詩を読んでいるような詩的な作品です。

 何度かリーディングパフォーマンスも行われました。
ヒラノマドカさん主催のHP"ざぽん"が詳しいです。
  寮美千子ファンページ "記憶の王国"
4

 星兎

  (パロル舎)

 ある日、人混みの中でユーリを見つめ、話しかけてきたのは、等身大のうさぎだった。食いしん坊で、どうしようもないやつなんだけど、泣きたいくらい素直な、大切な友達。本当に大切なものは何か。きれいなだけではだめなのか。出会った時と、現在の出来事がリンクしながら交互に語られる、せつなくて、ちょっぴり哀しいお話。

 寮美千子さんによれば、この物語に出てくるドーナツは、カフェ・デュモンドのベニエをイメージしたとのこと。ぷくんと四角くてアツアツのベニエのサイト(デジタルクーポン付き)はこちらです。FOODのところにあります。
5

 おおかみのこがはしってきて

  (パロル舎)

 アイヌの民話を題材にした絵本。
アイヌの言葉がルビのようにふってあって、それを声に出して読むと、ぐんと雰囲気が出て楽しくなります。小林敏也さんの絵も素晴らしくて、お日様、雲、風、山、地球がアイヌの模様で飾られています。豊かな大地の春の息吹が感じられる植物や動物。カバーを外した本の色合い、手触りも美しい本です。
 おまけのように一緒に挟まれていた「北の大地の物語通信」にはアイヌの言葉や文化が詳しく説明されています。
 例えば、空(ニシ nis)の影(クル kur)で雲(ニシクル)。

 アイヌ童話に興味のある方へ。
  AERA Mook「童話学がわかる。」P103 三つのアイヌ童話
   もとになったお話が紹介されています。
6

 しあわせなキノコ (思索社)

 写真集【 写真=井沢正名 文=寮美千子 】
  図書館の分類番号:748のコーナーにありました。

 森の中なのに、海を感じさせるクラゲや珊瑚のようなキノコ、童話に出てくるような可愛いキノコから、これもキノコ?っていう変わったのまで、いろんなキノコがそっと話しかけてくれます。寮さんらしく、宇宙と星にまで広がりをもたせた新発見の1冊でした。
7

 父は空 母は大地
 --インディアンからの手紙--

  (パロル舎)

 はるか昔から大地と共に生きてきたアメリカン・インディアン。
 アメリカ政府によって半強制的に居留地に移された時、インディアンの首長シアトルが残した150年前の伝説のスピーチです。

神戸元気村の作品紹介サイトでは、「インディアンからの手紙」が見られる絵本のページがあります。
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